病院長あいさつ MESSAGE
地域に信頼される病院を目指して
病院長 邉見 達彦
令和5年春を迎え周囲の山々を見ると37年前に赴任した当時の景色と変わらず春を迎
える緑の樹木が拡がっています。街並みの方に目をやると、新たに建設された高速道路が目に入り、田畑であった場所に新築された住宅の姿が月日の流れを感じさせます。
当院は、昭和28年創立の健康保険鳴門病院が前身であり、平成25年に国から徳島県に移管され地方独立行政法人徳島県鳴門病院として再出発し10年目となります。創立から数えると今年で70年目を迎え、70年間を支えてくださった全ての職員と地域住民の皆様、医師会、市役所を含めた関係者の皆様に深く感謝の気持ちを奉げたいと思います。
当院は、307床の病床を持つ徳島県北部地域の中核的総合的診療基盤を持つ地域医療支
援病院です。令和2年から始まった新型コロナ感染症との戦いは、令和5年5月8日をもって5類相当に変更され一つの転換点です。今回明らかになった当院の課題は、院内の患者動線が分離されておらず、陰圧装置も不備であったことです。このため、救急外来の施設を改修し、今後予想される新興感染症と一般救急の受け入れを並行して安全に扱える救急総合診療センターの新設を計画しています。
これに加え、南海トラフ巨大地震による津波被害から病院機能を守るための病院周囲の防潮壁造設、災害時の被災患者の広域搬送、物資搬入のためのヘリポート建設も同時に行います。平時は救急救命のための患者搬送用ドクターヘリポートとして活用し、災害時には物資輸送を行う自衛隊ヘリが発着可能となる12トン荷重対応のヘリポートであり、外部から見ても地域住民の皆様の目を引く建造物となります。併せて災害医療センターの設置も決定しており、患者様や地域住民の生命を守るためにも、早期に完成させる必要があると考えています。
10年の節目を迎えた当院は大きく変貌の時を迎えています。これからも地域の皆様、医師会、行政などのご理解とご協力・ご支援を頂きながら、適切な医療を提供できる徳島県鳴門病院でありたいと考えています。
現在の鳴門病院の臨床指標
令和四年度の臨床面の結果をご報告します。入院患者数は一日平均154.4名(深夜24時現在)で利用率は79.4%です。新規入院患者数は一日平均12.9名、平均在院日数は12.0日です。外来患者数は400.9名/日、新規外来患者数は44.9名/日でそのうち紹介患者数は15.4名/日です。手術室での手術件数は500点以上では、コロナの影響で減少し年間1,895件でした。
病診連携を通じて、紹介された患者さんに適切な医療を提供するとともに、当院からも地域の医療施設に逆紹介しています。現在紹介率79.6%、逆紹介率128.9%です。
救急科新設に伴う二次救急の受け入れ推進で急性疾患や外傷に対しての貢献をしています。令和四年度の救急車受け入れは2,323件で入院1,120人(48.2%)でした。救急車以外での救急受診は3,863件で入院590名(15.3%)でした。合計6,186件で入院1,706人(27.6%)でした。鳴門市消防局からの救急要請受け入れ率は80.8%の実績を残しています。さらに上を目指します。
これからの鳴門病院
- 罹患患者の多い糖尿病診療の充実を目的に糖尿病・内分泌センターを開設しました。さらに、健診センターの機能の拡大を図ります。
- 脳卒中、心筋梗塞などの脳血管、心血管の急性発作対応も継続します。
- 手指再接着などで全県的に評価され、貢献度の高い手の外科分野は手の外科センターを設置し充実しております。また、四国でも屈指の内容の脊椎外科も脊椎脊髄センターを新設し充実しました。特に、局所麻酔での腰椎椎間板ヘルニア手術など後側方からの局所麻酔下手術も第一人者の徳島大学整形外科西良浩一教授とコラボしていきます。
- 総合内視鏡センターでは内科的な内視鏡検査で異常の見つかった患者さんが内視鏡手術や外科の手術にスムーズに移行できるようにシームレスな医療の流れを提供します。
- 乳がん手術時の一期的な乳房再建術も当院の誇る突出医療です。
- 産科、小児科の診療では入院機能を持つ当院は地域の中核となり周産期医療、小児医療の政策医療に貢献しており、これを継続します。
- 災害時の医療訓練や食料、薬剤備蓄などで、近い将来に予想される南海トラフ地震や津波などの災害に備えていきます。
- 初期臨床研修施設、専門医研修施設としての機能を果たし次世代の若い地域医療の担い手の育成も心がけています。
最後に、今後は地域包括ケアシステム構築を念頭に、地域完結的な医療の構築、充実に努めたいと考えています。急性期医療を中心にしながらも周囲の慢性期医療施設や介護施設、ケアマネージャー、訪問看護ステーションなどと緊密な情報の共有をして、慢性疾患の急性増悪時の際などにもスムーズに対応可能な後方支援病院の機能を持つ徳島県鳴門病院でもありたいと考えております。
今後の皆様方のご協力、ご支援を重ねてお願い申し上げます。